こらぼシティ・シティミーティングまとめ ~子ども版ローカルプレイヤーの教室~
2024年08月31日 11:59
合同会社えんがわ
森川公介
こらぼシティでシティミーティングで構成・ファシリテーターを担当した合同会社えんがわの森川です。私は普段、東京都足立区で「あやせのえんがわ」というコミュニティスペースを運営しながら、地域活動や市民主体の取り組みに関する講座やファシリテーターを行っています。
今回は、「1日だけのみんなでつくるワクワクするまち・こらぼシティ」のこらぼ商店街ブースにて、子どもも大人も一緒に企画を考え、実現させるシティミーティングを担当させていただきました。
子どもたちにやりたい出し物を提案してもらい、それを大人が準備して形にするだけであれば、それほど難しいミーティングにはなりません。しかし、こらぼシティのまちづくりは、子どもも大人も「お客様」とせずに、「市民」として一緒に作り上げるという趣旨で行われるため、良質なごちゃまぜを生み出すことが求められました。
そこで、市民が共にまちを作るための基本的な考え方やコツを伝えることを目的に、毎回「5分講座」というコーナーを設けました。この短時間の講座では、プロジェクトの共有の基本から、ワクワクするまちづくりのアイデアまで、シンプルに伝えることを目指しました。
ここからは、5分講座のまとめやシティミーティングを振り返っていきます。
【初日】余白と参加について(2024年5月15日)
子どもも大人も緊張感を抱えた初日。通常であれば、簡単なゲームを使ってアイスブレイクを行うのが一般的ですが、今回は時間が1時間30分と限られていたため、まずは私からのメッセージとして、「今日来てくれた誰もが対等に参加する権利を持つ場である」という内容を5分講座で伝えました。
「対等に参加する権利」という言葉は、堅苦しく感じられたり、義務のように捉えられるリスクがあるため、私はこれを「余白」と表現しました。参加者がこらぼシティでの関わり方を自ら見つけられるように、「もしも壁に絵を描くとしたら」という例えを使い、関わりの余地としての余白を視覚的に説明しました。
余白がなければ関わることができませんが、余白が多すぎると、何をしていいのかわからなくなることもあります。これが今回のフレームワークです。
初日は、まだ何をするかが決まっていない状態でした。特に今回は自由度が高く、やれることが多い状況だったため、余白が多すぎる状態でした。しかし、前述のように、子どもたちからやりたいことを募ってただ実行するだけでは、最初は関わりがあっても、後半になると「決めたことをやらなければならない、やらされている」という状況に陥りやすくなります。この現象は、こらぼシティだけでなく、住民会議などの様々な場面でも起こりがちです。
こうなってしまうと、ワクワクするまちづくりとは程遠くなってしまいます。そのため、参加者一人ひとりが自分の関わり方を見つけ、自らの意思で関わることができるように、余白についての解説を行いました。
その後、ワークショップとして「ワクワクするまち」を皆で考え、意見をシェアしました。このワークショップの目的は、こらぼシティでの関わり方について自分自身と向き合い、今後長く関わる市民同士で想いを共有することにありました。
4つのグループに分かれ、それぞれのグループで多くの意見が出ました。一部をご紹介します。
(ワクワクするまちってどんなイメージ?)
・おいしいものがたくさんあるまち
・いろいろな動物と触れ合えるまち
・まほうが使えるまち
・自由に楽器が演奏できるまち
・せんそうがないまち
・おやがうるさくないまち
・一年中イルミネーション
・映えスポットがあるまち
(このまちであなたはどんなことでワクワクしたい?)
・聞こえてくる音楽からお気に入りを見つけてワクワクしたい
・たべあるき
・歌ったり踊ったりしたい
・イリュージョンでマジックをしたい
・謎解きしながらまちをめぐりたい
・お祭り(えんにち)をしたい
・みんなでおしゃべりしたい
・みんなでおいしいものを食べたい
・何かを流したい
・ロボットを作りたい
このワークショップを通じて、参加者同士の距離が縮まり、これから始まるこらぼシティへの期待とワクワク感がさらに膨らんでいく様子が伝わってきました。
【2日目】自分を知ろう(6月19日)
この日は、初日に参加できなかった人もいたため、新しい仲間を受け入れる際の「平等」と「対等」について、今回の事例を用いて説明しました。
初日から参加している人と2日目から参加した人は、見た目では大きな違いはありませんが、理解度に差があれば、緊張感も異なります。しかし、市民としては対等であるため、初日から参加している人が少し歩み寄ることで、簡単に対等な関係を築くことができる、ということをお話ししました。
その流れで、5分講座「自分を知ろう」です。前回のワークショップでは、「ワクワクするまち」について意見交換をしました。これからこらぼシティで市民参加の可能性を広げるためには、他者から出た意見をもう一歩深く理解し、自分自身と向き合うことが重要です。そのために、今回は潜在ニーズをサッカーに例えて説明し、まだ自分が気づいていないワクワクを探してみようという話をしました。
ツールとして「あなたのキニナル?チェックシート」を作り、前回出た意見から気になる意見を3段階に分けて書き留めてもらいました。
とってもキニナル:自分が非常に関心のある意見
ちょっとキニナル:とてもキニナルほどではないが、多少関心のある意見
キープ:上記の2つに入れるか迷った意見
このシートをもとに、「こらぼシティ」での企画についてグループ分けを行い、それぞれのグループで企画を考えていきました。企画の形はそれぞれ異なりますが、初日・2日目の学びや気づきをもとに、具体的なアイデアが次々と出てきました。
□水族館や動物園
・風船と(工作した)クラゲを吊るしたい
・レジンで海の生物を作るワークショップ
・チンアナゴのワニワニパニック
□流しおかし
・流しそうめんのように、流しおかしをやってみたい
・流す筒はペットボトルで作ってみたい
□音楽・楽器
・カラオケ大会、みんなで歌いたい→生バンドで歌いたい
・楽器を弾きたい、体験したい
□まほう
・まほうを使ってルール(怒られたりすること)を消したい
・ビームを出したい
・重力を消したい
□電車
・こらぼシティで電車を走らせたい
初日に行ったまちのイメージを考えるワークとは異なり、より具体的な話し合いが行われたため、「本当にこんなことができるのかな?」「もう少し意見をまとめたいな」など、期待と不安が入り混じる様子も見られました。
3日目に向けて、この不安をワクワクに変えることが課題となりました。
【3日目】こらぼってどんなときに生まれる?(7月17日)
このシティミーティングも折り返しです。いよいよ具体的に企画を進めていく段階に入りました。
そこで今回の5分講座はコラボレーションについてお話ししました。互いに意見を出し合い、協働して進めていくための合意形成から目標設定までを、ワクワクという表現を使って説明しました。
その上で、協働で起こるエラーなどについても併せて説明しました。
グループに分かれ、企画が決まり、あとは段取りだけというところで、初日から築いてきた「市民として一緒に作るまち」のバランスが崩れ、ただのイベント企画にならないように、この部分は丁寧に説明しました。
また、この日は全員が車座になって、すべての企画を全参加者でシェアする形式を取りました。実現可能な企画は、誰がどのように進めるかを検討し、実現が難しそうな企画は「みらいレターズ」としてこらぼシティに掲示することにしました。
そして、これまでグループに分かれて検討していた企画を、参加者全員が自分ごととして考え、意見交換を行った結果、企画の概要がより鮮明になりました。2日目に生まれた不安は、この時点ですでにワクワクへと変わりつつありました。
この日のファシリテーターは、デザイン関係で子ども向けワークショップを開催している仲間に託しました。彼の助けもあり、この車座ミーティングは非常に充実した時間となりました。
【4日目】ふかん(俯瞰)してみよう(8月21日)
ここまで来たら、あとは準備するだけですが、5分講座の最終日には「俯瞰」についてお話ししました。これは、各企画が内輪ノリにならないようにするための重要なポイントです。
実際のまちづくりにおいても、知らぬ間に閉鎖的なコミュニティになり、外部からの参加者が関わりにくい状況が生まれることがあります。関係者たちが排他的な運営をする意図がなくても、俯瞰的に見てみると、さまざまな課題が原因で関わりにくさが生まれてしまうことがあります。
そこで、子どもたちにはハンバーガーの例えで俯瞰について説明しました。ハンバーガーを食べるという行為を俯瞰してみると、ハンバーグに使われた牛はどこで生まれたのか、パンの小麦はどんな人が育てて収穫したのかなど、さまざまな工程や関わりが見えてきます。
さらにお祭りを例にして、これから行う企画を俯瞰して考える視点を、「ワクワク」と「モヤモヤ」という表現で説明しました。
最後に、今回の参加者の企画を俯瞰してみた時に、こらぼシティへ遊びにきた初対面のお客さんにもワクワクしてもらうにはどうすればよいか、考えてみてもらうことにしました。
考える視点として、「わかりにくい」「ルールが複雑」などのモヤモヤが見つかったら、スッキリさせることで「ワクワク」につながるという解説をしました。
5分講座はここでおしまい、あとは市民が力を合わせて、まちを作っていきます。
こらぼシティでは、参加者を市民として迎え入れたため、私自身が行政の一員としての役割を担ったと感じています。この5分講座で伝えられることは、ほんのわずかでした。しかし、講座を長くすると、市民が考える時間が減ってしまいます。行政主体であれば、講座を長くして私の考えるまちづくりを進めることができるかもしれませんが、市民の意見は最小限にとどまってしまうでしょう。
一方で、市民にすべてを任せ、「好きなようにやってください」とすると、前述のように余白が広がりすぎて、何をすればよいのか分からなくなってしまいます。
今回のシティミーティングでは、子どもも大人もまちづくりを実際に体験する機会となりました。誰かが地域で楽しいことを考えたとしても、それを一人で最後まで実行し、継続するのは困難です。多くの市民が楽しいことを実践し、共有し、仲間と振り返りながら次へとつなげていく。このシティミーティングが、そのような体験の一つになれば幸いです。
そして、このような肯定感に満ちた市民同士の関わり合いこそが、未来の地域自治につながることを願っています。